この日、本当なら・・・
ドキドキしながら、その結果を待っただろう。

今日は夫の昇格発表日。
彼は昇格テストに合格し、ファイナルのリストに残った。
彼がこの職業について今まで18年間目標にしていたゴール
はすぐそこにあった。

そのファイナルから合格者が発表される日。


でも・・・彼の名はそのリストには無かった。




不合格?



それならまだ諦めもつくだろう。


【陰謀】と【権力】に操られ、彼の名前はリストからはずされた。


この日、合格者達は夫の周りで肩を抱き合い喜んだ。


彼は、そんな彼らに「おめでとう」の言葉をかける。

血を吐く思いで言葉をかける。。


受話器の向こうから届く弱々しい声とは裏腹に深い怒りと
憎しみを言葉にする。。。



「自分が今まで努力してきた全てを彼らは奪っていった。
彼らの思いのままの結果となった。彼らに僕は・・・負けた。
もう・・・全ては終わりだ。」




負けた?



負けてなんていない。


むしろ負けたのは愚かな司令官と上司という肩書きだけの無能者達だと
私は言った。




人を陥れる卑怯な事をする人に勝利はない。
今の状況を見て微笑んでいても、最後に泣くのは彼ら達だと。



人の不幸の上に幸せは成り立たない。


だから、夫も彼らに対しての憎しみや怒りは捨て
自分の正義の為だけに戦い続けるだけだ。



この件が勃発してから、私はそうしてきた。



司令官に出したメールも
法律事務所に向かった自分も
図書館で必死になってした作業も・・・



正義は必ず勝つと信じたから。




真っ向から、自分の正義を証明し、
真っ向から、自分が受けた屈辱を公表し、
真っ向から、守られたシステムを相手に戦うしかない。



出来る。


最後に出る結果は勝ち負けではなく
自分の真実に値する結果でしかない。



私が涙で声も出せない彼に出来る事はただただ一つ。
何があっても私は彼をサポートする事。


彼の側に居て彼を抱きしめる事も手を取って励ましの
言葉をかける事も許されない私には、私がこちらで出来る事を
するだけだ。



そう、正義という名の戦いの為に。



99%は彼の望む結果となると信じている。
でも何ごとにも完璧は無い。


万が一、残りの1%が起こったら、その時はこの仕事以外に
彼が輝ける所があるというお印だと、私は彼に言った。


どちらにしても、この出来事も後で感謝する事が必ず出来るはず。
だから、全てを受け止めて前を見よう。



生きている、息をしている、それだけで何だって出来るのだから。



真面目すぎる位真面目な彼がこんな汚い出来事に巻き込まれ
彼の心を壊した心無い人達を私は恨む事はしない。。


貴方達みたいな人が居るから人は何が正しくて何が間違ってるか
学べるから。



だから、ありがとう。


でも、私は戦う。正義の為に。彼が受けた痛みと屈辱を晴らす為に。。。



その一言が言いたくて。


ありがとう。


普段何気にそこに居て、私に愛情をくれる、そこの貴方。


ありがとう。


いつも、居てくれるのが自然だから気づかなかったりするけど
何かあった時にこんなに助けられてる、
こんなに力になってくれてるって心で感じる。


ありがとう。



人は一人では生きていない、


ううん、生きていけると思った事もあった。
でも、それはイルージョン。


私達は必ず誰かと関わり合いながら、それが良くも悪くても
自分の明日に繋がる。



私にはたくさんの素敵な関わりがあって、今ココにいる。
何か絶望的な事やめげる出来事も人からのたくさんのサポート
がいつもそれを良い方へ導いてくれた。



後は・・・良い関わりを得るのも悪い関わりを得るのも・・


自分次第。



自分の襟を正そう。今までもそして、これからもどんな事が
あってもそれを逆転させて良い方向に持って行ける自分、そして
それをサポートして貰える自分で居よう。。。




ありがとう。







生きてれば色々ある。


何で?と首を傾げたり、どうして?と頭項垂れたりする事もある。


でも、どうしてそうなったかなんて事を考えるのはもうよそう。


首を傾げたり項垂れたり泣き叫んだ出来事にも何か意味があり
必ず答えがあるはず。


今は姿無き愛する人達と又再会する為には
その園への鍵が必要だと悟った。。。


毎日の自分の行いや人に対しての思いやり、愛情、そして形無き
愛する人への想いが100%満足出来る様に生きてく事で鍵を手にする
引換券が貰える様な気がする。



誰と同じに生きなくてもいい、その園に既に旅たった人と同じに
生きなくてもいい、むしろ人間なんて人と同じに生きてはいけない。



自分の人生、自分の足で立ち、自分を生きる!



そして、自分に旅たちの招待状が来た時、行きたい園への鍵をそっと出せる様


今を生きよう。



朝日が見れて、笑えて、愛せて24時間という時間が与えられてる事に
感謝をして、今を生きよう。。



去年の今日もこんな五月晴れのいいお天気だった・・

去年のこの日

この日、私の最愛なる母親を亡くした日。

今、彼女が丁度病院へ出かけた時間。
その痛みに耐えられなくて、病院へ行った時間。

辛い癖に病院は近くにあるからと歩いて行った母。

あなたが歩いたその道が最後になるとは・・・・
その時思わなかったね?


一緒に付き添って行った妹に、どの道を歩いて
病院に行ったかを聞き出し、毎回実家に帰る度に私は
その道を歩きながら母にそんな問いかけをしてみる。。


彼女が大切に大事にした大好きな我が家に戻る道はそこに無い
事を彼女は知らずにその道を歩いて行った。
もう戻ることのできない道を。。


私はその道を何度も何度も歩いた・・・・・

彼女が踏んだ足跡を踏みながら最後に彼女が見た光景を
自分の視線に収める。。

彼女が生きてきて、最後に見た光景を。


マンション前のごみ置き場。
公園脇に咲く雑草。

少し歩きゆるやかな坂から見える東京のグレーな空。


あなたは見上げたはず。


産業道路。


激しく行きかう車の数。


必要として買った水が売られていた自販機。



その時のあなたの飲んだ水のボトルは今もなお
大事に保管してる。。


HI380559.jpg





病院へ行く為に渡る信号。



そして・・・・

この世で最後の場所となった病院
その扉を開け、あなたはもう戻らない人となった。



時間は流れ、それから一年。



私は何度も・・何度もこの道を歩いた。。。
歩いてはあなたが最後に見た全ての光景を目に焼きつけ
あなたが何を思ったか、どんなに痛かったか、どんなに心細かったか

それを感じたかった。。


最後、誰にも会えず、誰にも何も言えず静かにこの世
を後にしたあなたに唯一私が出来る事だと思ったから。。


ごめんなさい。。


その道を一緒に歩けなかった事。



その道を戻って帰って来れなかった事。



ごめんなさい。。。


どんなにか寂しかったでしょう。。。


あなたがたくさんの愛を注いだ家族は・・・・
あなたの側にいる事は出来なかった。。
あなたを見送る事は出来なかった。



ごめんなさい。。。。



そうやって何度も私は彼女が戻る事の出来なかった道を歩いた。


それから一年。


私は、時が過ぎてもその道を好んで歩く。
最後に母が歩いた道。


そこにはただの景色だけではなく、彼女が生きてきた全ての
証を重ね合わせる事が出来る気がするから。。


母の人生最後の花道を、私は彼女に感謝して歩く。


そうして歩いて来て1年。
今日母の命日にはそこを歩く事は出来ないけど
五月晴れの青い空を見上げ彼女を想う。。。


出てくる言葉はいつもこれだけ。



お母さん・・・ありがとう。。。
最後側に居る事は出来なかったけど、いつも
あなたの事は想っています。。

どうか安らかに眠ってね。。。。何の心配もしなくていいからね。。





家の掃除をしはじめた時に気付く。

去年お母さんがここに遊びに来て掃除した時に使った
クレンザーが空になった。


ゴミ箱に捨てようとそのクレンザーを持つ。
そのクレンザーを触りながら、間接的にお母さんと触れ合った
気がした。そのクレンザーを捨てる事に寂しさを覚えた。



料理をし始めた時に気付く。


去年お母さんがここに遊びに来て料理した時にあったお米
の袋が空になってた。


ゴミ箱に捨てようとそのお米の袋をたたむ。
たたみながら、袋をなぞる。
お母さんが触ったんだなぁってなぞる。。


お母さんと間接的に触れ合った気持ちになれて
その袋を捨てる事に切なさを感じた。



こうして・・・娘心はどこにでもお母さんとの接点を求める。


そして、時間と共にお母さんが残した形ある物はどんどん
消えていく。


残るのは形無き、お母さんの思い出。


気付けば、ゴミ箱の中は娘心で一杯になっていた。